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Author:hikari
アレクサンダー・テクニークを教えています。からだとこころにまつわる日々の気づきなどを綴っていきます。

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シルヴィ・ギエム引退公演

先日、上野の東京文化会館で、シルヴィ・ギエムの引退公演を見た。
「100年に一人のダンサー」と呼ばれたシルヴィ・ギエム。
引退すると聞いて、最初はとても残念に思っていたのだけど、
最後の舞台を観終わったあと私の胸にあふれたのは、
ただただ、「ありがとう」という感謝の気持ち。
それと同時に、地に足のついた、清々しい解放感だった。

2003年の秋、初めて彼女の踊る「ボレロ」を見たときの、
あの衝撃を私は一生忘れない。
踊りが、頭を介さずに、直接体に入ってきた。
それはまるで心臓を手で触られたかのような、直接的な体験だった。
私はそれまでにも色々な舞台を見てきたけど、
もし人生で見た最高の舞台をひとつだけ選びなさいと聞かれたら、
迷わずあの日の「ボレロ」と答えるだろう。
初めてだったからこそ、まっさらな心で踊りを味わうことのできた、
人生で一度きりの至福の体験だった。

それから12年間、彼女の来日公演はほとんど欠かさず見続けた。
そして今、とても穏やかな気持ちで引退を祝福することができる。
「もっと見たい」と執着する気持ちが起こらない。
そう思えるのは、たぶん、初めて見たあの日、
私は本当に、彼女の踊りを味わうことができたからだと思う。
たった1度でもしっかり味わったなら、素敵なサヨナラができるんだ。

自分自身についてそう思えたとき、気がついた。
引退を決めたギエムも、もしかしたらそんな心境だったのではないかと。

「進化し続けるダンサー」と言われたシルヴィ・ギエム。
一瞬一瞬に全力を注ぎ、作品を充分に味わったからこそ、
過去のスタイルにこだわらず、新作に挑み続けた。
そして今年、ダンサーというアイデンティティにも別れを告げて、
新しい人生に踏み出そうとしている。
想像だけど、私が引退公演から受け取ったのは、彼女のそんな生き方だった。

12年前、シルヴィ・ギエムは私のハートをつかんで、
それまで見たこともない、はるか遠くの世界へ連れて行ってくれた。
そして今年、引退する彼女がしてくれたのは、
私のハートをしっかりと私の胸に戻してくれることだった。
この舞台を見終わったら、私は私の人生をしっかりと生きるんだ。
そう思いながら家路についた。

ありがとう、シルヴィ。
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